恐怖へいざなうメールはいかが~from.ミチカ
密かな思い
 森田も春乃同様、慌てて教室へ飛び込んだ。同じく授業を担当する教師はまだ来ておらず、胸をなで下ろした。授業は数学。数学の教師は英語の教師に次いで、生徒の素行にうるさい。授業開始までに三回間に合わなければ、何やらペナルティーが課せられる。考えただけでイヤになる。
(気をつけないとな…これからは放課後も土日も修行に明け暮れるんだ。ペナルティーで山のような宿題とか出されたら、たまんないよ!)
席につくとハァとため息をつきつつ、教科書とノート、ペンケースを取り出した。授業を受ける気はあまりなかったが、そぶりくらいは見せようと思い、ノートを開きパラパラとめくった。
「あっ…!」
めくっている途中、切り取ったページの端を見つけた。春乃にお守りを上げるため、メモ用紙を作ろうと切り取った残りだ。
(懐かしいな…あの頃はどうやったら今川さんと話せるだろうって悩んでいたんだよな。それが今じゃ、友達になれた。夢みたいだ!)
さっきのシーンを思い返すと顔がニヤけた。彼女は初めてできた友達。異性だが、やっとできた友達なのだ。
 彼女は強気だが、ちゃんと優しさを持った、笑顔がキュートで魅力的な女の子。森田の中では、世界で一番ステキな女の子だ。
 気づけば、彼女と知り合ってから彼女の事ばかり考えていた。彼女の事を考えていると、嬉しくて幸せな気持ちになった。
 森田はふぅ、と甘くて小さなため息をついた。
(何ヶ月…いや、何日友達でいられるかな。…今川さん、僕は君の言うとおり言いたいことがあります。隠している事があります)
森田は切り取ったページの端を、指先で愛おしそうに撫でた。
(今川春乃さん、僕は君が『好き』です。大好きです!でも、今まで気が付きませんでした。さっき、君ともうあまり会えないかもしれないと思った時、やっと気づきました。…でも、言えませんでした。言うと、友達の関係さえ壊れてしまいそうな気がして)
森田はワイシャツの上から、お守りを握りしめた。春乃を救ったお守りを。


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