恐怖へいざなうメールはいかが~from.ミチカ
 この状況にすっかり気が動転してしまった店長は、アナウンサーの質問に対し、支離滅裂な返答をしてしまった。
「俺には大学に通う息子がいるのに…私立高校へ通う娘がいるのに…クビになんて、なっていられるかっ!」
上に立つ者としては、あまりにお粗末なコメントである。当然、周囲からは非難の声が上がり、店長はさらに厳しい状況へ追い込まれた。私は翌日のワイドショーで見たのだが、コメンテーターの誰一人としてかばう人はいなかった。
(店長、本当にゴメンなさい。私、できるだけの償いをします。だからどうか、ヘコまないでガンバって下さい!)
だが願いもむなしく、連日のワイドショーによる報道合戦により客足が減少すると判断された店は、閉店となってしまった。店長のお粗末なコメントに失望した上、七人も亡くなった店を客は嫌がり来ないだろうと、本社は判断したようだ。
(良いバイト先だったのになぁ…しょうがない、自分のせいだもんね。また探すか!)
下校しようと正面玄関を出た私は、ヘコんだ気持ちを癒そうと空を見上げた。もう午後三時だが、まだ雲一つ無く快晴だ。真っ青な空には、ギラギラと光と放つ太陽が輝いている。
 ふと、ミチカの事を思い出した。彼女は今、どうしているのだろう。天国で幸せに暮らしているのだろうか。罪を償っているのだろうか。?
 すると、店で亡くなった七人の恐怖に歪んだ顔が浮かんだ。
 ミチカは無事成仏できたが、亡くなった七人のうち五人は、いまだ魔界に囚われたまま。負の感情に責めさいなまれ、苦しんでいるに違いない。
(このまま知らんぷりしていていいのかな?放っておいていいのかな?ううん、いいワケがない。こうなる原因を作ったのは私。…なんとか彼らを成仏させてあげなきゃ!)
私は固く決心した。
(お金を稼ごう、彼らを成仏させてもらうためのお金を。霊能者を捜すのは、森田君に手伝ってもらおう。森田君、詳しいみたいだし。…そうだ!森田君が弟子入りする陰陽師はどうだろう。力のある人なら、五人まとめて成仏させる事ができるかもしれない。…よーし、またバリバリ働くぞ!がんばってバイトをするぞ!)
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