恐怖へいざなうメールはいかが~from.ミチカ
瞬殺したい現実 2
 首の皮一枚でどうにかつながり辞めずにすんだ私は、午後十一時、ぐったりしてバイト先を出た。今日一日で色んな事がありすぎた。願いが叶うなら、目の前に家の玄関が現れて欲しかった。歩くのがめんどうだった。
(もしくは、お金持ちの子供になりたい。そうしたら、黒くて高そうな車で誰かが迎えに来て、玄関の前まで送ってくれるもの。うっわー、楽っ!…いや、違うか。お金を沢山持っているから、バイトしなくても親が携帯電話の使用料を払ってくれるし、遊ぶお金もくれるんだ。こんな辛い思いしなくてすむんだ!)
かなわぬ境遇を思い、かえって落ち込んだ。
 少しでも気分転換しようと、歩きながら携帯電話を開きメールをチェックした。さすがにバイトをしている間は休憩時間以外、触れない。おまけに今日は騒ぎを起こした罰として、夕飯を食べるどころか休憩時間さえもらえず、飲まず食わずで働き続けた。とうぜん、携帯電話には指一本触れられなかった。そのため、二ケタを超える数のメールが届いていた。
 中でもミチカから来たメールの数がダントツに多かった。まだ友達になったばかりなので、どんなしょぼい内容のメールだとしても、来ただけで嬉しい。タイトルを見ているだけでテンションはあがり、疲れも瞬く間にフッ飛んだ。
(ミチカから七通も届いている!モメていたせいで『これからバイトがあるから、しばらくメールを出来ません』って伝えるの忘れていたもんな)
親友から来たメールには目もくれず、ミチカからのメールを一番に、着信順に開いた。
 メールのやりとりをする約束をしてから届いた一通目のメールは、キモ暗い青年とモメている最中に届いていた。初の返信メールから三十分後だった。
(携帯電話をスカートのポケットに入れていたけど、大声でモメていたから着信音に気づかなかったんだ。ゴメン!)
謝りつつ、メールを読んだ。
―春乃さん、すぐに返信してくれてありがとう。今日はこれから何をするんですか?私は塾へ行きます―
(ミチカ、塾に通っているんだ)
ミチカの新しい情報を得た事を喜びつつ、すぐ二通目を開いた。着信時間は午後六時五分。一通目から四十五分後だ。

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