恐怖へいざなうメールはいかが~from.ミチカ
―お返事がすぐ来ないところを見ると、もしかして塾の授業中ですか?私は今、塾に着きました。これから数学と英語の授業を受けてきます。―
(ごめんね、そのころ店長にガッチリしぼられていて、とても携帯電話をイジれる状態じゃなかったの)
さらに謝りつつ、三通目、四通目…と、いっきに最後まで開いた。メールは約一時間おきに届いていて、数が多くなるほど内容は寂しさが増しているように感じた。
(本当にゴメンね、寂しい思いさせて。今すぐ返信するから待っててね!…あ、寝ていたらゴメンね!)
私は胸を痛めつつも、焦って返信メールを打った。もし私がミチカなら、ブチ切れて『絶交してやる!』と叫び、実際そうしていただろう。それを思うと、焦らずにいられなかった。
 あっという間にメールを打ち終えると、送信して閉じ、両手で挟んで拝んだ。後は神にミチカが許してくれることを祈るしかなかった。
 拝み終えると、携帯電話をたたんでスカートのポケットにしまい、家路を歩き出した。『もしかしたら、絶交されるかもしれない』と思うと恐ろしくて、じっとしていられなかった。
「・・・?」
歩いて間もなく、目の前に黒い人影が見えた。その人影は私の横を通り過ぎる時も真っ黒で、顔や服だけじゃなく、何を着ているのかも、男か女かもわからなかった。
 私をチラリと見てビクッと震えたので、驚いたのだけわかった。
「???」
よく見れば、黒い影は道路を挟んで反対側の通りにも、私の前にも後ろにも沢山いた。影は人が歩くのと同じ早さで歩道を移動していた。
(何?何コレ…何なの?き、気持ち悪いっ!)
闇の中をうごめく影の得体が知れず、頭の天辺から足のつま先まで恐怖が駆け抜け、全身鳥肌が立った。のんきに歩いてなどいられない。逃げるため全速力で走った。しかし、信号が赤の時には止まらなければならず、きつく目をつぶり隣にいる人影を見ないようにした。震えを止めたくて、胸の前で手をギュッと握りもした。
 だって、気配まで消せない。感じてしまうのだ。
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