恐怖へいざなうメールはいかが~from.ミチカ
「娘が救急車で運ばれたってのに、仕事仕事って。ふつうのお母さんなら、髪を振り乱して駆けつけてくるはず。これじゃ、まるで働き蜂のおっさんだよ!」
私はひどく腹がたって、父に背を向けた。父は図星を指されて困ったのか、何も言おうとしない。
(フン!困れ困れ!そして反省しろ!子供の事をちっとも心配しない冷血女に、天罰をくれてやれ!)
心の中で毒づいたら、少しスッキリした。スッキリしたら、メールをチェックしたくなった。黒い影の事が気になったが、ミチカが寂しがっているかもしれないと思うと、いてもたってもいられなかった。
携帯電話を出そうとズボンの右ポケットへ手を伸ばすと、ポケットがなかった。いつの間にか病院の寝間着を着ていたのだ。検査のために着替えさせられたらしい。あたりを見回せば、携帯電話は頭のベッド側に置かれた小さな台の上に乗っていた。二つ折りの画面を開くと、右上に表示された時計を見た。午後一時四十三分だった。気絶したのが二時間目の始まりだから、午前十時前後からメールをチェックしていない事になる。
(もう四時間近くメールをチェックしていない。たっぷり来ているだろうな)
案の定、受信トレイを開くと、四十通以上のメールが来ていた。これまで親しくメールを交換していたメル友とミチカからのものだ。特にミチカからは多く、五通も来ていた。
(怒っていなきゃいいな…)
一瞬頭の中を嫌な映像が過ぎったが、無視した。私はドキドキして一通目を開いた。
―春乃さんからお返事が来ないので、私からしちゃいました。今、何をしているんですか?私はまだ歴史の授業中です。苦手なので、話しを聞くのも嫌です。―
その三十分後、二通目が届いていた。
―忙しいんですか?早く返事欲しいです。春乃さんの事大好きだから、いっぱいお話したいです。―
その三十分後、三通目が届いていた。
―早く返事下さい、返事下さい!寂しいです、悲しいです!―
(ヤバイ、悲しませちゃった…)
その五十分後、四通目が届いていた。
―今、お昼の休み時間です。これから昼食を食べようと思います。今日の昼食は、大好きなチョコレートパンと卵サンドとコーヒー牛乳です。…でも、あんまりおいしくありません。春乃さんからメールが来ないから寂しくて、大好きな物も味気ありません―
私はひどく腹がたって、父に背を向けた。父は図星を指されて困ったのか、何も言おうとしない。
(フン!困れ困れ!そして反省しろ!子供の事をちっとも心配しない冷血女に、天罰をくれてやれ!)
心の中で毒づいたら、少しスッキリした。スッキリしたら、メールをチェックしたくなった。黒い影の事が気になったが、ミチカが寂しがっているかもしれないと思うと、いてもたってもいられなかった。
携帯電話を出そうとズボンの右ポケットへ手を伸ばすと、ポケットがなかった。いつの間にか病院の寝間着を着ていたのだ。検査のために着替えさせられたらしい。あたりを見回せば、携帯電話は頭のベッド側に置かれた小さな台の上に乗っていた。二つ折りの画面を開くと、右上に表示された時計を見た。午後一時四十三分だった。気絶したのが二時間目の始まりだから、午前十時前後からメールをチェックしていない事になる。
(もう四時間近くメールをチェックしていない。たっぷり来ているだろうな)
案の定、受信トレイを開くと、四十通以上のメールが来ていた。これまで親しくメールを交換していたメル友とミチカからのものだ。特にミチカからは多く、五通も来ていた。
(怒っていなきゃいいな…)
一瞬頭の中を嫌な映像が過ぎったが、無視した。私はドキドキして一通目を開いた。
―春乃さんからお返事が来ないので、私からしちゃいました。今、何をしているんですか?私はまだ歴史の授業中です。苦手なので、話しを聞くのも嫌です。―
その三十分後、二通目が届いていた。
―忙しいんですか?早く返事欲しいです。春乃さんの事大好きだから、いっぱいお話したいです。―
その三十分後、三通目が届いていた。
―早く返事下さい、返事下さい!寂しいです、悲しいです!―
(ヤバイ、悲しませちゃった…)
その五十分後、四通目が届いていた。
―今、お昼の休み時間です。これから昼食を食べようと思います。今日の昼食は、大好きなチョコレートパンと卵サンドとコーヒー牛乳です。…でも、あんまりおいしくありません。春乃さんからメールが来ないから寂しくて、大好きな物も味気ありません―