恐怖へいざなうメールはいかが~from.ミチカ
その十分後、五通目が届いていた。お昼休みの終わり頃だろう。
―どうしても待ちきれなくて、メールしちゃいました。…春乃さん、私の事嫌いですか?嫌いじゃなかったら、すぐメール下さい。お願いします!―
小さな長方形の液晶ディスプレイに並んだメッセージはそれほど長くなかったが、ミチカの切実な思いをひしひしと感じた。今の彼女は、ミチカとの出会いを切望していた頃の私と同じだろう。本当に寂しいに違いない。
(ごめんね、遅くなって。今すぐ返信メール送るからね)
急いで新規のメール作成画面を開くと、猛然と打った。
―ミチカ、返事が遅くなってごめんね。昨日から変な黒い影が見えるようになって、今日の午前十時頃、とある影に脅されたの。それで、あまりにも怖くてブッ倒れて、生まれて初めて救急車で運ばれたんだ。今は病院のベッドの上にいるの。だから今まで、メール送れなかったんだ。ミチカが嫌いになったわけじゃないよ。安心して―
(神様、お願いします。ミチカとの仲を取り持って下さい!)
目をつぶり祈ると、送信した。すると、少し気分がスッキリした。
 しかし、まだ医者が来る気配はない。私は医者が来るまでの間を利用して、親しいメル友から来たメールをチェックすることにした。
「あれ…あれれ?」
受信順にメールを開こうとしたが、どうしても動かない。選ぶためのカーソルが上下に動くばかり。
(壊れた?さっきまで普通に動いていたのに…)
焦ってアレコレイジってみる。インターネットはできるし、メールの作成も出来る。出来ないのは、受信したメールを開く事。それも、ミチカからのメール以外。しかし、そんな設定をした覚えはない。
(本当にどうしたんだろう…マジで壊れちゃったかなぁ?あー、携帯ショップへ行きたい。壊れたかどうか、今すぐ調べたい!早く医者が来ないかなぁ。…そうだ!来るのを待っていないで逃げ出すか!)
「お待たせ、今川さん。ごめんね、容体が急変した患者さんがいて、そっちの処置をしていたら遅くなってしまったの」
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