恐怖へいざなうメールはいかが~from.ミチカ
年配の女性の声が足下の方からしたので見た。そこには白衣を着た五十代くらいの小柄な女性が立っていた。診察をしに来たに違いない。私は逃げ出せなくなり、がっかりした。
「・・・!」
すると突然、入り口から黒いモヤのかかった青白い顔の男性が入ってきた。男性は四十代くらいで、ひどく痩せていて、背中を丸めたままノロノロと歩いていた。私は言葉にできないほどの激しい恐怖に襲われていた。
「今川さん、そのまま寝ていて下さい。血圧計りますから」
看護士の女性に言われた通り寝ていると、彼女は私の右腕上腕部に灰色でマジックテープがついた布を巻いた。黒い空気入れで腕が痛くなるくらい空気を入れれば、血圧計の数値を見ていた。その間私は出来るだけ震えないようにして、黒いモヤのかかった男性をチラチラ見た。
 男性は私の寝ている右隣のベッドに近付いてきて側に立つと、ジーッと眺めていた。私の寝ているベッドと隣のベッドにはカーテンが引かれておらず、おまけに誰も寝ていない。しかしベッドを見つめる彼の目はひどく寂しげで、そうしている理由がとても気になった。
(ベッドに何か思い入れでもあるのかな…?)
チラチラと様子を見ていたら、男性は私を見てニヤリと笑った。彼の目は、黄色く濁っていた。
「・・・!」
『私ガ見エルノカイ?オ嬢サン』
「ひっ…」
『見エルンダネ。私ハ約一年前、ココノ ベッドニ寝テイタンダ。十時間ホド ダガネ。会社デ書類ノ沢山詰マッタ段ボール箱ヲ持チ上ゲヨウト シタラ、急ニ心臓ガ痛クナッテ倒レテ シマッタンダ。ソレデコノ病院ヘ救急車デ運バレテ、ソコニイル医者ヤ看護士ニ治療シテモラッタンダガ…死ンデシマッタ』
「死んだ?」
「どっ、どうしたの?今川さん。誰が死んだの?」
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