恐怖へいざなうメールはいかが~from.ミチカ
「どうしたんだい?春乃。どこか具合が悪いのかい?」
「…したい」
「え?ごめん、聞こえなかった。もう一回言ってくれるかい?」
私は看護士さんの横から顔をのぞかせた父をキッと見た。父は再びビックリした。いや、お医者さんも看護士さんもビックリした。
「霊を祓いたいの。はらいたいのっ!」
「霊を祓いたい?何で?」
「あのね…」
「うん」
「私に、悪霊が取り憑いているから」
「悪霊!」
父は目をまん丸にして叫んだ。お医者さんや看護士さんは手を止め、ギョッとした。周りもシーンとなった。カーテンの向こうにいる人がビックリして話しをやめてしまったようだ。
「あ、悪霊って、映画によく出てくる悪い霊だろ?強い恨みつらみを持っていて、それを晴らすために誰かに取り憑いて、あの世へ連れて行くってヤツ。ハハハ!現実にあるわけないだろ、そんなこと。バイトのしすぎで疲れて、変な夢でもみたか?」
「本当だよ、冗談じゃないよ!ナガタってオジサンの霊も見たよ。オジサンは一年前、隣のベッドに寝ていたんだけど、十時間後に死んだの。ねぇ、そうでしょ、お医者さん!」
「ああ、そうだね。ナガタさんは搬送されてきて十時間後に亡くなったよ。でも、なんでそんな事知っているんだい?」
「オジサンが、さっき出てきて言ったから」
「でも春乃。それと悪霊と、どういう関係があるんだ?ナガタって人が悪霊だって言うのか?」
「ナガタってオジサンは、悪霊じゃないよ。ただ成仏していなくて、この病院に棲んでいるみたい」
「じゃあ、悪霊に取り憑かれていないじゃなか」
「違うよ。オジサンは私に悪さをしようとしたけど、私にすごく力が強くて悪い霊が取り憑いているから、できなくて逃げていったの。…つまり、私は悪霊に取り憑かれているの」
「ま、まさか…」
「昨日の夜や今日の午前中も、黒くて人の形をした影が沢山ウロウロしているのを見たの。でも他のクラスメイトには見えていないの。だって倒れる前の体育の時間、みんなフツーにしていたもん。今だってナガタってオジサンが現れたのに、お医者さんも、看護士さんも、父さんもフツーにしていた。見えているのは私だけ。それって変でょ!」
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