恐怖へいざなうメールはいかが~from.ミチカ
階段を駆け下りると、黒いモヤをまとった白髪頭のおばあさんが、ゆっくりした足取りで上がってきた。私は彼女をかわして一階のフロアーに降りると、そのまま正面玄関へ向かって走った。おばあさんは、生きている人間のように驚いた。正面玄関から続く受付のあたりには、生きている人と黒いモヤをまとった人が大勢いて、全員食い入るように私を見ていた。誰も襲っては来なかったが。
それにしても、黒いモヤをまとった人が、人としてハッキリとわかるようになってきた。私は違う世界と深く関わりだしているのを改めて感じ、さらに恐怖が増した。
正面玄関を抜けると、右側に延びる坂道を駆け下りた。道は大通りにつながっていて、次から次へと来院者が上がってくる。その人々を避けながら、全力で走った。気がつけば、病院の寝間着を着たままだった。だが着替えている暇はなく、靴を履いている暇もなく、野生児のように駐車場へ向かって走った。
「春乃ーっ、どこだーっ!」
「今川さん、どこにいるの!戻ってきてっ!」
背後から、父や看護士さんの呼ぶ声が聞こえた。私はたまたま鍵のかかっていない自転車を見つけると、カゴに鞄や服を放り込み、外へ飛び出した。
とても数時間前、救急車で運ばれた人間とは思えない速度で自転車のペダルをこいだ。目の前の景色が解けるように流れていく。五分もすると父や看護士さんの声は全く聞こえなくなった。一度止まって振り返り誰の姿も見えないのを確認すれば、ようやくホッとした。靴を履けば、ゆっくりとこいだ。
街中までは少々距離があったが、開放感に包まれた今、快適なサイクリングだった。携帯電話が、電話用に設定した着信メロディーで三回ほど鳴ったが、もちろん出なかった。
借りた自転車をバイト先の一番そばにある駐輪場に置くと、一礼した。自転車はあくまで借りた物。返す気はなかったが、お礼の礼くらいしておこうと思った。
荷物を持って行きつけのゲームセンターへ行くと、トイレでジャージに着替え、しばらく遊んだ。制服は学校に起きっぱなし。また明日学校があるので、明日行って着替えればいいと思った。
ゲーム機があるフロアーへ行くと、同じ学校の生徒に二、三人会ったが、知っている人はいず、特に注意もされなかった。一人で遊ぶのは寂しかったが、誰かと関わり合うのはめんどうくさかったのでガマンした。
それにしても、黒いモヤをまとった人が、人としてハッキリとわかるようになってきた。私は違う世界と深く関わりだしているのを改めて感じ、さらに恐怖が増した。
正面玄関を抜けると、右側に延びる坂道を駆け下りた。道は大通りにつながっていて、次から次へと来院者が上がってくる。その人々を避けながら、全力で走った。気がつけば、病院の寝間着を着たままだった。だが着替えている暇はなく、靴を履いている暇もなく、野生児のように駐車場へ向かって走った。
「春乃ーっ、どこだーっ!」
「今川さん、どこにいるの!戻ってきてっ!」
背後から、父や看護士さんの呼ぶ声が聞こえた。私はたまたま鍵のかかっていない自転車を見つけると、カゴに鞄や服を放り込み、外へ飛び出した。
とても数時間前、救急車で運ばれた人間とは思えない速度で自転車のペダルをこいだ。目の前の景色が解けるように流れていく。五分もすると父や看護士さんの声は全く聞こえなくなった。一度止まって振り返り誰の姿も見えないのを確認すれば、ようやくホッとした。靴を履けば、ゆっくりとこいだ。
街中までは少々距離があったが、開放感に包まれた今、快適なサイクリングだった。携帯電話が、電話用に設定した着信メロディーで三回ほど鳴ったが、もちろん出なかった。
借りた自転車をバイト先の一番そばにある駐輪場に置くと、一礼した。自転車はあくまで借りた物。返す気はなかったが、お礼の礼くらいしておこうと思った。
荷物を持って行きつけのゲームセンターへ行くと、トイレでジャージに着替え、しばらく遊んだ。制服は学校に起きっぱなし。また明日学校があるので、明日行って着替えればいいと思った。
ゲーム機があるフロアーへ行くと、同じ学校の生徒に二、三人会ったが、知っている人はいず、特に注意もされなかった。一人で遊ぶのは寂しかったが、誰かと関わり合うのはめんどうくさかったのでガマンした。