恐怖へいざなうメールはいかが~from.ミチカ
出会い:from魔界
 いつものように授業を終え校舎を出ると、昼下がりながら眩しい日差しが目に飛び込んできた。雨は二時間前に止み、気温も上がり、すっかり夏の兆しだ。雨でビショビショに濡れた地面も、どんどん渇いていく。
 しかし、私の心は曇りだしていた。今にも豪雨が降りそうだ。
 約一時間前から来だした二十通のメールは、どれも『今日はこれから予定があって、二、三時間メールができません』ばかり。バイトが始まるのは午後六時だからそれまで暇なのに、つれない奴ばかりだった。
(何で今日に限ってみんな忙しいの?全員が塾に通っているわけじゃないし、部活をやっているわけじゃない。バイトだって、勤務時間バラバラでしょ。暇なの、一人くらいいるでしょ!誰か付き合ってよ!)
だんだんイライラしてきた。怒りのメールを送りたくなってきた。みんなグルになって私をだまそうとして、ウソをついているんじゃないかとさえ思った。
 だが確認のため『本当にメールできないの?』と問えば、『本当に無理』と返ってきた。どうやら今日は、かなり相性が悪いようだ。
(こんな事初めてだ!二十人全員が用事あるなんて、あり得ないよ!…でも、しょうがない。無理だって言うんだから、他を当たってみるか)
バイト先であるファストフードの店『シスタードーナツ』の斜め向かいにあるベンチに座ると、週に一回くらいしかメール交換しない相手へ渋々とメールを送った。いつもメール交換しているメル友に比べ、返信が遅くてイライラするので、あまり連絡を取りたくなかったが、バイトまでの二時間を一人で過ごす方が嫌なので、甘んじてやる事にした。
 それくらい私は寂しがり屋。十分以上誰とも関わらないでなど、いられなかった。

 私が携帯電話依存症になったのは、たぶん寂しがりやだからだろう。

 父はタクシードライバーで給料が安く、働けど働けどお金持ちにならない。少しでも多く稼ごうと割の良い夜に沢山走っているが、生活していくのがやっと。本人も不満に思っているが、高卒の上、立派な資格も無いので、好条件の職には就けないでいた。
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