恐怖へいざなうメールはいかが~from.ミチカ
 そのまま午後五時四十五分頃アルバイト先へ行くと、シフト通り働きだした。するといくらか気分が良くなり、笑顔も戻ってきた。
 だが、やっと戻った笑顔を曇らせる人が、午後七時頃やって来た。担任の先生だ。
 担任には先日、携帯電話の事で嫌味を言われあまり良い思い出がない。顔を見るだけでウンザリだ。しかし店内にはお客だけでなく、パートのおばちゃんやアルバイトをしている大学生の男の子もいるので、むげに扱えない。むげに扱えば、一昨日店長に怒られたばかりなので、今度こそクビになりそうだった。
(ガマンガマン!ちょっとの辛抱よ。大丈夫、先生は忙しいし、結婚しているから、帰って奥さんが作ったご飯を食べなきゃいけない。作って待っているはずだから。こんなところで油売っている暇はないわ!)
必死に自己暗示をかけ、無理矢理笑顔を作った。
 担任の教師は私がいるカウンターのところへ来ると、ちょっと緊張した様子で『よう』と言った。どうやら店の雰囲気が肌に合わないらしい。
(いいぞー、早く帰れぇー、早く帰れぇー!)
私は心の中で呪文のように呟いた。
「今川、調子はどうだ?」
「もう大丈夫です」
「本当にか?午前中、救急車で運ばれたんだ。無理するなよ」
先生は小声で言ったが、そばにいたパートのおばちゃんには聞こえたようで、ギョッとして私を見た。彼女の反応を見た私もギョッとして目をそらした。人情深い彼女なら『それは大変、早く家へ帰りなさい!』と言いそうだからだ。
(嫌だ、帰りたくない。帰りたくない!)
「ほ、本当に大丈夫です、先生。全然、問題ありません。ちょっと疲れていただけなんです。病院で寝たから、すっかり良くなりました!!」
「体育の原口先生から聞いたが、悲鳴を上げて倒れたそうじゃないか。それもかなり激しく。あれは『尋常じゃない』と言っていた。何かあったんだろ?」
「何もありません。一ミリもありませんっ!それに、先生。私、仕事中なんです。もう帰って下さい」
「隠し事をしていないか?」
「していません!だから帰って下さい。仕事のジャマをしないで下さい。私、マジメに働いているんですから!」
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