恐怖へいざなうメールはいかが~from.ミチカ
 ただ、彼女はメル友の中で一番大事な存在。いつも一日中、たわいのない内容でメールのやり取りをし、私を癒してくれている。しかし今日は、まだ朝の挨拶しかしていない。
(不安になってもしょうがないよね…メール返せなくて、本当にゴメン!)
私は心の中で謝った。そして、出来るだけ早く問題を解決すると誓った。
『そっかー忙しいのか。ハルちゃんのバイト先、人気あるものねー。じゃあ、しかたない。今回は許してあげる!』
「ありがとう!でも、私もできるだけ連絡するね」
『うん、待っている』
「…そうだ、明日の夜ってヒマ?」
『塾が午後9時に終わるから、それ以降はヒマだよ。…あ、もしかして、明日の夜は、バイト休み?』
「ううん、出勤だよ。でも、なんか声聞いたら、香に会いたいなーと思って」
『嬉しい事言ってくれるじゃない!』
香はアハハと元気に笑った。その声を聞いていたら、私も元気になってきた。
『明日、バイト終わるの何時?』
「午後十一時頃」
『じゃあ塾終わったら、どっかで時間つぶしてバイト先行くね。…あ、他に何人か誘ってカラオケとか行く?』
「うん、行く行く!この前、ゲーセン行ったしね。次はカラオケ行きたい!」
『実はね、新しい曲を一曲マスターしたんだ。絶対、披露するね』
「うっわー、超楽しみ!今晩眠れないかも!」
『ダメだよ、ちゃんと寝なきゃ。学校行って、働いてもいるんだもの。寝ないと体を壊しちゃうよ』
「そうだね、ちゃんと寝るよ」
『じゃ、明日ね。そうそう。カラオケだけど、いつもの、メンバーに声をかけておくから』
「うん、よろしく」
『うん、おやすみ』
笑顔で通話を切ると、先ほどまでの不幸せな気分は全部どこかへ飛んでゆき、胸の中は幸せでいっぱいになった。体まで軽くなったような気がし、ソファーの上へ子供のように飛び乗った。
(香って、本当に優しい子だよなぁ。将来看護士になりたいって言っていたけど、きっとステキな看護士になるだろうな。どんなに大変なことがあっても、がんばって欲しいなぁ)
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