恐怖へいざなうメールはいかが~from.ミチカ
ハッピーサプライズ
 翌朝私は学校の制服に着替えると、恐る恐る外へ出て黒い影や黒いモヤのかかった人がいないかを、しつこいくらい確かめた。二度と怖い思いをしたくなかった。
 近くにあるコンビニへ行くと、歯ブラシのセットや化粧品、朝食用のパンやジュースを買った。お金ならそこそこ持っている。塾にも行かず勉強そっちのけで働いているので、けっこうな金額のバイト代をもらっていて、先日口座に振り込まれたばかり。おまけに、携帯電話の使用料の支払期限は二週間後。今、事務所で寝泊まりしているから宿泊代もかからない。食べ物や日用品を買うくらい問題なかった。
 店の事務所に戻ると、パンをかじりながら携帯電話を入れっぱなしにしている紺色の通学バックを眺めた。携帯電話に直接触らずともイメージしただけで、昨日起こった病院での一件を事細かに思い出せた。恐怖の思い出を。
(この携帯電話、どうしたらいいんだろう…機種変更するしかないかな)
この携帯電話はすでに二年以上使っているし、月の使用料金に応じて貯まるポイントもかなり貯まっているので、新しい機種でも安く変更できる。
(このままの生活を続けるわけにはいかない。メール交換ができなければ、どんどんメル友は減っていくだろう。また昔のように、誰にもかまってもらえない生活なんて絶対嫌、嫌、嫌っ!一秒だって考えたくないっ!)
私は鞄から目をそらすと、頭を激しく左右に振って考えを振り払おうとした。パンを食べるのをすっかり忘れて。
(よし。今日学校が終わったら、機種変更しに行こう。時間なら沢山ある。そして、みんなにメールしまくっちゃおう!)
すると、ミチカの事が頭を過ぎった。
(ミチカには連絡する?しない?どうしようかな…せっかく仲良くなれたんだから、新しい電話からメールをしたい。でも送ったら、返信メールが来る。そうしたら、何か起きるかもしれない…)
私はあのことに薄々感づいている。しかし、ミチカを恨みたくなくて、あえて気づかないふりをしていた。
(機種変更は学校が終わってからする事にしよう。それまでミチカについてよく考えてみよう)
ずるいと思いながらもこれ以上傷つきたくなくて、少しだけ現実から逃げる事にした。
 思い出したようにパンを食べていると、ふと、ちょっとしたアイデアをひらめいた。

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