恐怖へいざなうメールはいかが~from.ミチカ
 お約束のように母は家計を支えるため、私が小学生になるとパートへ出だした。母の稼ぎは家計を支え、緊急事態に備えての貯蓄をも潤した。
 生活は豊かになったが、二人はいつも忙しそうで人生に疲れていた。そんな父と母を見ていたら、『寂しい、かまって欲しい』なんて言えなかった。
―心は死にそうなほど愛情に飢えていたのに、ひたすらガマンした。―
 おまけに親友は習い事を沢山していたし、私も塾に通っていたので勉強に忙しく、遊ぶ余裕はなかった。帰ってきても、ペットも飼っていなかったので、家の中は静かでガランとしていた。今日あった事を話す相手がいない。
 私は一人、寂しさに耐えきれず号泣した。
 せめて妹でもいれば、妹を心の拠り所に子供らしい人生を送れるかもしれないと思い、一度だけ勇気を出して母にお願いした。
『ねえ、母さん。…私、妹が欲しい』
『うちにそんな余裕があるわけないでしょ!子供を育てるのに幾らかかると思っているの!春乃を一人面倒見るので精一杯よ!』
小学二年生の夏、夕飯の後片づけをしていた母は、吐き捨てるように言った。聞く耳など、全くなかった。
 私の心には、より重く寂しさがのしかかった。

 そんな私に救世主が現れた。携帯電話だ。

 中学生にもなると、学校の下校時間が遅くなる。中学生の頃はまだちゃんと塾に通っていたので、さらに帰宅時間は遅くなった。その時に、安全のためにと持たされた。周りの人もほとんど持っていた。私は特別な人ではなかった。
 今と違っていたのは、数少ない友人や家族と連絡を取る事だけに使っていた事。使用額はいつも余裕で三千円以内。たくさん余る時もあった。
 転機が訪れたのは、持ち始めて半年ほど経った頃だった。
『私のと同じ機種だ!』
塾が終わって帰ろうとした時、友達へ急いで伝えなければならない話しがあったのを思い出し、玄関で立ち止まると、連絡を取るため鞄の中から携帯電話を取りだした。すると、そばにいた他校の女子生徒が突然叫んだ。顔は知っていたが、話した事は一度もなかった。
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