恐怖へいざなうメールはいかが~from.ミチカ
週刊誌のため多少過激な描写はあるものの、全てをでっち上げて書いたようには思えなかった。八十パーセント以上は事実を書いているとしか思えなかった。
 それでも信じたくない自分がいた。信じれば、自分の命が危険にさらされる確率が上がるから。
 だが、私はどうしても確率を下げたかった。そして、『この文章は偽物だ!』という証拠が欲しかった。
(そうだ!他の週刊誌にも似たような記事が載っていないか見てみよう)
私は読んでいた週刊誌を本棚の一番上に置くと、他の号を手当たり次第取って開き、見た。しかしこの事件に関して記事が載っているのは最初手に取ったものだけで、他の物には一行も書かれていなかった。
 呆然としたまま出した全ての週刊誌を本棚へ戻すと、フルーツ牛乳の瓶を回収ボックスへ入れ荷物を持つと、フラフラして銭湯を出た。その後、どうにかバイト先へたどり着いたが、どうやって来たのか覚えていない。通い慣れた道だから、体が勝手に動いたとしか思えなかった。
(だ、大丈夫かな私。彼女たちみたいに死なないかな…)
バイト先の制服に着替えると、急に涙があふれてきた。次から次へと止めどなくこぼれた。こんな事になってしまい、悲しくて辛かった。早く元の生活に戻りたかった。
 私は更衣室の隅に置かれた丸椅子に腰掛け、シクシク、シクシクと泣いた。早く店舗へ行って働きたかったが、どうしても涙が止まらなかった。ひたすら泣き続けた。
 しかしそれがよかったのか、十分ほどすると大分気分も晴れた。やる気がわいてきた。
(泣いていても何も変わらない。とりあえず働こう。バイトがクビになったらシャレにならない。携帯電話の使用料が払えないし、遊ぶお金が無くなる。もしそうなったら、学校が終わったらずっと家にいなきゃいけない。寂しいうえに、母さんが帰ってきたら文句の嵐に巻き込まれてクタクタだ。…いや。そんなの、ぜっっっっっっっっっっっったい、嫌っ、嫌っ、嫌っ!)
私は激しく身震いした。考えるだけでダメだ。
(よし、働くぞ、働くぞ、働くぞ!超、がんばるぞ!クビになんてならないぞっ!)
私は格闘技の戦士のように『オス!』と気合いを入れると、さっそうと更衣室を出て行こうとした。
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