恐怖へいざなうメールはいかが~from.ミチカ
私は足早に店内を物色すると、青い半袖カットソーの二枚組セットと、白いショートパンツ、ピンク色のキャミソール一枚と、真っ赤なブラとショーツのセット一つを選んだ。かかった時間は五分。もちろん試着はできない。サイズだけを見て、鏡の前であて、決めた。
(こんなに急いで買い物をすると、なんか悲しくなってくる…次は制服を着て入店して、ゆっくり選ぶわ!)
買い物は私にとってストレス発散も兼ねているので、息つく間もなく選ぶのは嫌だった。私はリベンジすると堅く誓った。
 急いで会計をすませ服を袋に詰めてもらうと、再びダッシュしてバイト先へ戻った。クリーニングに出したワイシャツは休憩時間か、明日、一番で取りに行く事にした。クリーニング店のある場所の側には、沢山会社がある。出勤前にワイシャツを出していくサラリーマンが多いので、かなり早い時間から開店しているのだ。
 買ってきた服をロッカーに放り込むと、鏡に向かってガッツポーズした。
(よーし、これで大方の予定はこなした。さあ、バイト、ガンバるぞっ!)
気合いを入れると、急ぎ足で店舗へ向かった。さっき、買い物を急いでしたので悲しかったが、袋を持って走っているうちだんだん嬉しくなってきた。やっぱり新しい服を着れるのは嬉しかった。
(じつはあのショートパンツ、けっこう気に入っているんだよな。一分で決めたけど、みんなに『かわいい!』ってほめてもらえる自信あるもん!)
考えていると、どんどんヤル気になってきた。店舗に通じるドアの前に着た頃には、すごいヤル気に満ちていた。
 そして本日、それはうまい方向へ働いた。
 店舗に入ると、たくさんのお客がレジの前に並んでいた。今にも店から溢れそうだ。今日は『人気のある十五種類につき、百円均一で買える』キャンペーンの日。だからだろう、もう夕方の六時を回っているが二台あるレジはフル稼働。カウンターにいる正社員のお兄さんや、パートのおばちゃん、アルバイトの羽田や相葉は、必死に接客しているが、いっこうに客は減らない。買って店を出て行く客の分だけ、また入店してくるからだ。
(こりゃ、がんばらないと!)
「あ、今川さん。ドーナツを補給して。もう無くなりそうなんだ!」
正社員のおにいさんが振り返りざま、せっぱ詰まった様子でいった。彼の額には、うっすらと汗が光っていた。
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