恐怖へいざなうメールはいかが~from.ミチカ
 相葉はとにかくモテる。小さな顔にクリクリの目、腰まで届く長い髪を明るい茶色に染め、緩くウェーブをかけている。スタイルも良い。細くて長い手足に引き締まったウエスト、バストはDカップ。これだけでも十分男が寄ってきそうなのに、雑誌まんまの小悪魔ファッションとグロスをたっぷり塗ったツヤツヤの唇に、男子達はメロメロだ。彼女は専門学校に通っているのだが、同じ学校の男子だけでなく、近隣の大学に通う男やその兄弟までトリコにしているらしい。今回デートする男も、同じ専門学校に通う男子のお兄さんらしい。学際に来た時に一目惚れしたらしい。
(本命の他に二、三人と付き合っているって噂だものなー。ってことは、四マタ?たいしたもんよねぇ。私にも一人分けてほしいわ!)
私と羽田は、スキップしながら更衣室へ向かっていく相葉の背中を恨めしげに見た。
「なーに、そんな目をして。今川ちゃんと羽田ちゃんは、まだ男日照りが続いているわけ?」
パートのおばちゃんがニヤニヤしながら話しかけてきた。
「ええ、バリバリの日照り中ですよ!通り雨でいいから雨を待っている、すっごくひび割れたアフリカの大地のようですよ!」
「だって羽田ちゃんって、四年制大学に併設された短大に通っているんでしょう。サークルだって入っているのに、一人くらい羽田ちゃんを好きになってくれる男の子はいるないの?」
「いたら、こんなところでこんな質問されていませんよ。私も相葉っちのように、『私はこれから彼氏とデートなんです。彼からのアポイントメントを優先させて下さい』って言って、スキップしながら更衣室へ向かっていますよ!」
「それは残念ねぇ。で、今川ちゃんは?」
「…右に、同じです」
「若いのに、寂しい青春ねぇ…」
「もうその言葉言わないで下さいって言ったじゃないですか!」
私と羽田は口をとがらせ、おばちゃんをにらんだ。おばちゃんは『それは失礼いたしました』と言って、明後日の方向を見た。
「なんだ、今日はみんな予定ありか。…しょうがない。また今度にするか」
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