恐怖へいざなうメールはいかが~from.ミチカ
店長は悲しそうに言った。おばちゃんはそんな店長の背中を優しくさすった。
「今度、一緒にごはんを食べるの、楽しみにしていますから」
「そうかい、そうかい。じゃあ次は、あんまり期待しないで声をかけるよ」
「大丈夫。今度は断りませんから。しょげないしょげない!」
こうして店長のおごりで夕飯を食べるのは後日という事になった。おいしい物をタダで食べれる機会なんてそうないので、できるならすごく行きたかったが、香は大切な友人なので先約を優先したかった。
 私達はそれぞれの予定に少しでも早く到達出来るよう、一生懸命働いた。沢山お客が来たので店内はいつも以上に汚れていて掃除するのは大変だったが、商品を完売出来た喜びに支えられ、最後まで素早く出来た。店長もホクホク顔で売り上げを数えていた。
「それじゃあ、もう帰ります。お疲れ様でした!」
「おう、お疲れ!明日もよろしくな!」
店の裏口で別れの挨拶を交わすと、一番に相葉が、迎えに来ていた彼氏の車に乗りどこかへ去っていった。店長、パートのおばちゃん、羽田は、三人一緒に電車の駅へ向かって歩いて行った。
 一人残った私は、店の正面玄関へ向かった。香はいつもそこで待ってくれているから。自信満々で行くと、予想通り香が待っていた。塾から直行してきたハズなのに、ちゃんと私服を着ている。大振りのキャンバス地バッグの中に、勉強道具と一緒に制服も入れているようだ。
「香っ!」
色々考えつつも、彼女に会えるのは嬉しかった。私は思いの丈を込め、暗闇を吹き飛ばす勢いで叫んだ。香はちょっとビックリしたが、私を見つけるとすぐ笑顔で手を振ってくれた。
「ハルちゃん!」
「待った?」
「ううん。さっき来たばかり。今日は早かったね。私、塾の復習をするのが嫌になって早く来たから、大分待ちぼうけするかと思っていたのに」
「それがさ、全部の商品が閉店三十分前に売れちゃってね。さっさと掃除すませて店を閉めちゃったんだ」

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