恐怖へいざなうメールはいかが~from.ミチカ
「すっごーい!今までこの店で働いていて初めてじゃない?」
「そうなの。もう、すっごい!ビックリしちゃった」
「…でも、よかった。元気そうで。今日もメールが来ないから、何か大変な事があったんじゃないかって心配していたんだ」
「あっ!ごめん。ちょっと色々あってさ」
「もう大丈夫だよ。元気にしている顔を見たから、安心した」
私は心から心配してくれている香の気持ちを知り、申し訳ない気持ちでいっぱいになった。そこで少しでも安心してもらうために、ここ最近起きている不気味な事件に触れないよう注意しながら、事情を説明することにした。
「…いや、実はね。一昨日くらいから携帯電話の調子がおかしくてさ、メールを送れなかったんだ。それで今日機種変更しようと思ったんだけど、時間が足りなくて出来なかんだ。明日は絶対する予定だから、新しいのに代わり次第、メールするね」
「そうだったんだ。ごめんね、責め立てるようなコトして。もっとちゃんと事情を聞けばよかった」
「こっちこそ。電話して早く説明すればよかったのに、しなかったからかえって心配かけちゃんたね」
「ううん、気にしないで。…ところで、メールを送れないって、どんなふうに送れないの?」
「えっ?あ、いや、それが私もよくわからなくて…」
「まあねぇ。携帯電話って手のひらに乗るサイズなのに、すごく複雑に出来ているよね。ちょっとおかしい事があっても勝手にイジっていいのかわかんないもの」
「ほ、ほら、明日携帯電話の店へ行く予定だから、心配しないで。さ、みんなも待っているんでしょ。行こう」
よもや悪霊が憑いて誤作動を起こしているなんて、口が裂けても言えない。高い確率で嫌われそうだった。
「でも、携帯電話使えないってすっごい不便じゃない?携帯電話って、『いますぐ連絡とりたーい!』って言うような、困っている時に使いたい物なのに使えないなんて。ねぇ、私と同じ機種だし見てあげようか?」
「も、もう、大丈夫!明日携帯電話の店へ行くって言ったじゃない!こういう時はプロに診てもらわないと、かえって壊れるんだよ。素人はおとなしくしていなって!」
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