恐怖へいざなうメールはいかが~from.ミチカ
「気を遣わなくっていいんだよ、ハルちゃん。『困った時はお互い様』だから、助けて欲しい時は『助けて』って言っていいんだよ」
「遣っていないって!あーそれより、香が新しくマスターした歌が早く聴きたいな。聞いたら、携帯電話が壊れてヘコんでいる私の気持ちも、すっかり元気になるだろうから」
「そんなんで元気になるわけないじゃん!」
「そんなんで意外と元気になるんだよ。香の声は癒しのパワーがすごいから、聞いた人は一秒で元気になるんだから。今まで知らなかったの?」
「知っていたら、とっくに病院に行ってコンサートをやっているよ。そうしたら、死にそうな人も助かるでしょ」
「うわー、医者いらなくなるね。そうしたら医者は働く場所がなくなるから、ご飯食べられなくなる。困るねー」
「もう、何言ってんのよ。あるわけないじゃん、そんな事!」
香はゲラゲラ笑った。彼女の笑顔を見ていたら、私も嬉しくなり笑ってしまった。
 すると、香と私の携帯電話が着信メロディーを奏でた。
「あっ、きっとリョウコかアカネからだ!」
香はバッグから携帯電話を取り出しメールを見た。もちろん私は見ない。不気味な事件が起きるから。
(香まで巻き込む事になるかもしれない。それってすっごい嫌!)
誰かと一緒にいる時は、できるだけ携帯電話をイジらない事にした。
「アハハ、やっぱり涼子からだった。『今日も込んでいるので予約したよー。そろそろ順番が来て呼ばれそうだから、早くおいで!』だって」
「ほらやっぱり。私の事心配している場合じゃないんだよ。さ、行こう行こう!」
私は香の背中を押し、待ち合わせ場所であるカラオケボックスへ向かって歩き出した。香をトラブルへ巻き込まないためには、出来るだけ携帯電話のネタに触れさせない方がいいと思ったのだ。
 よもやこの判断が裏目に出るなど、想像もしていなかったから。
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