恐怖へいざなうメールはいかが~from.ミチカ
「待ちなさいよ、涼子ちゃん!」
「マネしたくなるようなキャラしている茜が悪いんだろ。マネされたくなかったら、そのキャラ直せよ!」
「いやよっ、これが私だもんっ!」
「おい、また口調が元に戻ってきたぜ!」
「いいじゃないぃ、これがぁ、私なのっ!」
「『いいじゃないぃ、これがぁ、私なのっ!』」
「マネしないでってぇ、言っているでしょおっ!」
「『マネしないでってぇ、言っているでしょおっ!』」
「涼子ちゃん、もうやめてよぉーっ!」
「はいはいはい!二人とも、もうやめたやめた!」
私と香は半分笑いながら立ち上がり、ケンカの仲裁に入った。まるで子供のケンカだ。でも放っておくと歌う時間がどんどんなくなってしまう。被害甚大だ。
 五分でどうにか納めると、私達は慌てて飲み物と軽食を注文し、曲を選んだ。二時間しかないのに、すでに十分近く経ってしまった。モタモタしているヒマはない。
「そうだ、香。マスターしたって曲、入れた?」
「もちろんよ。一番に入れたわ」
「えっ?香、誰の曲をマスターしたって?」
「ミヒカリの最新曲よ」
「きゃーっ!ミヒカリ!マジ、超嬉しい!」
私は香に抱きついた。香もギュウッ、と抱きしめ返してくれた。香の体は柔らかくて暖かかった。私はとても幸せな気持ちになった。
 一番最初に歌ったのは、いつもトップバッターで歌う涼子。今日も見ている私達を暖めようと、みんなが合いの手を入れやすい、ヒットしたアップテンポな曲を歌う。予想通り1コーラス歌っただけで全員ノリノリになった。カラオケボックスの店員さんが注文した飲み物と軽食を運んできてくれたが、私達のテンションが高すぎてちょっと苦笑いしていた。
 続いて二番目に歌ったのは茜。引き続きノリのいい曲Jポップスで行くかと思えば、ノリのいいアニメソングを歌い出した。確かにみんな知っている曲だが、マイペースな彼女に全員大爆笑した。
「あいかわらずの茜ブシだぁー!」
涼子はおなかを抱えて笑った。さすがにこればかりは茜も笑っていた。

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