恐怖へいざなうメールはいかが~from.ミチカ
(私と違って、香は優秀な看護士への未来が待っている。こんなところでコケたらダメだよ!)
「ねえ…携帯電話、返して」
私は泣きそうになるのをこらえ、震える手を出す。今のところ何も起こっていないが、いつ悪霊が毒牙を向くかわからない。少しでも早く携帯電話を取り戻さねばならない。しかし、香は返そうとしない。携帯電話を隠すよう抱きしめ、私のいない方へ体を向けている。眉間にシワを寄せれば、捨てられた子犬みたいに頭をプルプル震わせ体全体で『イヤイヤ』をアピールした。今にも泣き出しそうな様子に、私の意気込みもなえかかる。
「ちょっとだけ待って、ハルちゃん。メールが開かないって言ていったでしょ?ためしに私が送ったメールだけ開くから、返すのはもう少し待って。他の人から来たメールは絶対に開かないから」
「いいよ。ほら、歌う時間がなくなっちゃうから返して」
「少しだから、ちょっと待って」
「待てないよ。すぐ返してよ。いくら香でも、かってに携帯電話を見られるのは嫌だよ!」
「お願い、少しだけだから」
「ダメ、返して」
「本当に少しだけだから、少しだけだから」
「返してっ!」
とうとう叫んでしまった。迫り来る恐怖に耐えられなかった。涼子に怒られてもいいから、香を守りたかった。
だが私の思いは届かなかった。香はすごい勢いで携帯電話を操作し始めたのだ。
「香っ!」
私はビックリした。香は衝動的な行動をする人間ではないのに、今は違う。人が変わったように目にもとまらぬスピードで携帯電話をイジっている。
すごく嫌な予感がした。
私はとにかく携帯電話を取り上げようと、香に飛びかかった。しかし涼子と茜に捕まり、香に指一本触れられない。
「何すんだよ、ハルちゃん。せっかく香が直してくれようとしているのに」
「そうだよぉ、ここでゆっくり待っていよおよぉ」
涼子と茜は楽しそうに言った。顔を見れば、笑っていた。しかし私はゾクッとした。
―笑っているのに、ゾクッとした。怖かった―
「ねえ…携帯電話、返して」
私は泣きそうになるのをこらえ、震える手を出す。今のところ何も起こっていないが、いつ悪霊が毒牙を向くかわからない。少しでも早く携帯電話を取り戻さねばならない。しかし、香は返そうとしない。携帯電話を隠すよう抱きしめ、私のいない方へ体を向けている。眉間にシワを寄せれば、捨てられた子犬みたいに頭をプルプル震わせ体全体で『イヤイヤ』をアピールした。今にも泣き出しそうな様子に、私の意気込みもなえかかる。
「ちょっとだけ待って、ハルちゃん。メールが開かないって言ていったでしょ?ためしに私が送ったメールだけ開くから、返すのはもう少し待って。他の人から来たメールは絶対に開かないから」
「いいよ。ほら、歌う時間がなくなっちゃうから返して」
「少しだから、ちょっと待って」
「待てないよ。すぐ返してよ。いくら香でも、かってに携帯電話を見られるのは嫌だよ!」
「お願い、少しだけだから」
「ダメ、返して」
「本当に少しだけだから、少しだけだから」
「返してっ!」
とうとう叫んでしまった。迫り来る恐怖に耐えられなかった。涼子に怒られてもいいから、香を守りたかった。
だが私の思いは届かなかった。香はすごい勢いで携帯電話を操作し始めたのだ。
「香っ!」
私はビックリした。香は衝動的な行動をする人間ではないのに、今は違う。人が変わったように目にもとまらぬスピードで携帯電話をイジっている。
すごく嫌な予感がした。
私はとにかく携帯電話を取り上げようと、香に飛びかかった。しかし涼子と茜に捕まり、香に指一本触れられない。
「何すんだよ、ハルちゃん。せっかく香が直してくれようとしているのに」
「そうだよぉ、ここでゆっくり待っていよおよぉ」
涼子と茜は楽しそうに言った。顔を見れば、笑っていた。しかし私はゾクッとした。
―笑っているのに、ゾクッとした。怖かった―