恐怖へいざなうメールはいかが~from.ミチカ
身を引きちぎるような辛い決意
 私は人通りの少ない道をフラフラしながら歩いた。向かう先は、再びバイト先。今日もバイト先に泊めてもらうつもりで、裏口の鍵を借りていた。
 しかし、昨日と違って今日は泊めてもらうのが嬉しくない。約一時間前に起きた事件がショックで気分はどん底だった。
(どうしよう、本当にどうしよう…どうしたらみんなに取り憑いた悪霊を引きはがして遠くへ追いやれるんだろう)
考えるとますます落ち込んだ。いっそ横を走り抜けていく車の前に飛び込み、死のうかと思った。
 あの後残りの四十五分は歌を歌わずに過ごした。三人は代わる代わる私を押さえ込み、私の携帯電話に送った自分のメールを見て異常なほど盛り上がっていた。自分が打ったメールだし内容は大した事じゃないだろうに、まるでものすごくおもしろいお笑い番組でも見ているかのようだった。そばで見ていた私は、さらなる恐怖に襲われた。
(これって絶対ふつうじゃないよね。ふつうじゃないよね!)
四人のうち三人も同じ反応をしているので、苦笑いさえしていない私は頭がおかしくなったのかと思った。しかし今まで生きてきた中でこんな事は一度もなかった。いくら勉強ができなくてもそれくらいはわかる。
 だから、怖かった。香も涼子も茜も狂ったとしか思えなかった。
 私は三人の狂ったような行動を止めたくて、携帯電話を取り上げようとした。だが二人に押さえ込まれ、どうしても取り上げる事ができなかった。『もっと見たい!』と言う誰かに取られたまま、闇に染まっていく様を見ているしかなかった。
―何も出来ないのが、すごく辛かった。―
 携帯電話を返してもらったのは、カラオケボックスを出る時だった。そのころには皆、正気に戻っていて、勝手に携帯電話をイジった事をとても後悔し反省していた。『何であんな事しちゃったんだろう…』とまで言っていた。
 おそらく三人が私の携帯電話をイジったのは、自分たちの意志ではない。後ろに立っていた黒い影の仕業だ。
―私に取り憑いて悪さをしているヤツだ―
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