恐怖へいざなうメールはいかが~from.ミチカ
(それはわかっている。でも、一人で戦って勝てるかな?)
勝てる自信はまるでなかった。立ち向かってボロボロに負け、殺されるのは目に見えていた。
(そうだ、一人でなんて無理だ。ちゃんと力を持った人に助けてもらわなきゃ)
頭の中に朝やろうと思っていた『お祓いをするための料金を調べる』と言う案が再び浮かんだ。私は大きくうなずいた。
(まずは、お祓いするのにどれくらい料金がかかるか調べなくちゃ。こうなったのは私の責任だから、私だけじゃなく香と涼子と茜の分も払わなきゃいけない。だから、できるだけ安いところを探さないと…)
少し不安になる。自分のバイト代だけで全部払えるのか自信がなかった。
(でも、なんとしてもお祓いをしてもらわなくちゃ。いつ命を取られるかわからないし、香や涼子、茜が取り憑かれたのは私のせいだから。自分で払えなんて言えない)
今回ばかりはさすがに反省していた。だから、後始末も自分でキッチリつけようと思った。
 ふと、キモ暗い青年の顔が浮かんだ。以前、彼に灰のようなものをかけられた時、彼は必死になって私の携帯電話を取り上げようとした。あの時素直に渡していれば、こんなひどい事にならなかったかもしれない。
(でも、そうするとアイツが取り憑かれていたかもしれない。それはそれで困るよね)
今さらどうにもならない過去をひたすら後悔した。できるならキモ暗い青年と会った日へ戻り、あの日の私から携帯電話を取り上げたかった。たとえ、取っ組み合いのケンカになっても。
 脳ミソが溶けるのではないかと思うくらい考えているうち、いつの間にかバイト先に着いていた。たかだか十分間の道のりだが、とても長く感じた。一歩を踏み出すのが面倒なくらいクタクタに疲れていた。
 鞄の中から店長に借りた店の裏口の鍵を取り出すと、開けて中へ入った。入り口のすぐ側にあるスイッチで廊下の電気をつけると、鍵をかけすぐ目の前にある事務所へ入った。
 事務所の中も真っ暗で、こちらも入り口のすぐ側にあるスイッチを押し、電気をつけた。替わりに廊下の電気を消した。節電のためだ。
 
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