恐怖へいざなうメールはいかが~from.ミチカ
 今ここで携帯電話を壊すのはいいが、機種変更の手続きをしていないので、データを…みんなのメールアドレスや電話番号がわからなくなってしまう。すべて携帯電話に記憶させているので、いちいち覚えていないし、何かに書いてもいない。登録した分全部を記録するのは量が多すぎて無理なので、せめて父と母、毎日メール交換をしていた人の分だけ残そうと思った。
(よし、やるぞ!)
ただ携帯電話を持つ手が、緊張のため震えた。さっき受信したメールを開いただけで、香達は悪霊に取り憑かれた。もしかすると今は操作しただけで取り憑かれるかもしれない。
―すでに取り憑かれている私は、また不気味な事が起こるかもしれない…―
(怖い…怖いよ、嫌だよ。何も起きないで欲しい!)
携帯電話を見て強く思う。一瞬、『もう誰ともメール交換できなくていいから、メールアドレスを転記するのやめようか』とさえ思った。
(ダメ、きっと後ですごく後悔する。もう後悔するのは嫌だ!だから、がんばる!)
「よし!」
気合いを入れると二つ折りになっている携帯電話を開き、次に電話帳を開いた。確認するよう恐る恐る部屋の中を見回すが、何も起こらない。静かな時が流れてゆく。
(イケる、かな?)
ホッとするとシャープペンの芯を出し、父や母、香や涼子、茜を含めた二十人分の携帯電話の番号やメールアドレスを一つずつ丁寧に書き出した。それはとても骨の折れる作業だった。
 携帯電話の番号はすべて九ケタ、メールアドレスは、変なメールが来ないようにするため、全員すごく長くしている。十六ケタ以上だ。そうすることにより簡単にはメールアドレスを想定できず、怪しい内容のメールを送ろうとしているヤツから自分を守る事ができた。ただすべて半角英数なので、何度も確認しながら書かねば間違えてしまいそうだった。一つでも間違えば、二度とメールは送れない。さすがに途中で睡魔に襲われウトウトした。起きたのは、首がガクッと振れて驚いたから。
(いけない!ここで粘ってやらないと、また被害者が増えてしまう。がんばらなきゃ!)
寝てしまいそうになるのを必死にこらえ、目をこすりながらノートに書き写した。久々に『キツイ』と思った。
< 85 / 202 >

この作品をシェア

pagetop