恐怖へいざなうメールはいかが~from.ミチカ
増幅する闇
 翌朝、午前六時三十分。森田はいつも通り低めのテンションで起床すると、ベッドの上に座り、自分を守る守護霊とご先祖様に朝の挨拶をした。そして、昨日守ってくれた事に対するお礼を述べ、今日一日の加護をお願いした。
 祈り終えると、いくぶんスッキリした様子で洗面所へ行き、顔を洗った。再び自分の部屋へ戻ると制服に着替え、茶の間へ行った。二十畳ほどの広さの部屋は、みそ汁と魚を焼いた良い匂いが充満していた。
「おはよう」
「あら、おはよう喜一。今日は早いのね」
「うん、早く目が覚めたんだ」
アイボリー色の絨毯をしいた茶の間中央に置かれた、大きくてどっしりしたテーブルに付くと、母がお盆に乗せ、みそ汁、ごはん、焼いたシャケ、ほうれん草のおひたしと麦茶を持って生きてくれた。テーブルの上にはすでに醤油とたくあんの漬け物が載っていて、食欲をそそる。森田はほうれん草のおひたしとシャケに醤油をかけ、『いただきます』と言うと、箸をもってご飯を食べだした。
 ちなみにテーブルに付いているのは森田だけ。父は寝坊常習犯なので、母が起こしに行くまで夢の中にいる。午前八時には家を出て会社へ行かなければならないので、そろそろ起きなければバタバタと出社の準備をするハメになるのに。
「お父さん、もう少しで七時になるわよ。起きて」
「うーん…」
茶の間の隣にある和室に行った母は、さっそく父を起こす。その声は、ちょっとあきれていた。
 本当なら父が寝ている部屋は来客用の寝室として使うはずだったが、お酒を飲むのが大好きな父は、たっぷり酒を飲むと動きたくなくなるらしく、気が付けばそこで寝ていた。そしていくら起こしても起きなかった。最初はタオルケットや毛布を掛け笑って見過ごしていたが、寒くなるとカゼを引いたので、とうとう和室を父の寝室にしてしまった。来客用の寝室は、二階にある森田の部屋の隣を使うことにした。母の寝室は、森田の向かいの部屋にした。
(夫婦別の寝室にすると離婚しやすいって聞いたけど、うちはこのスタイルでもう十年もやっているからな。この先もきっと何事もなくやっていくんだろうな)

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