恐怖へいざなうメールはいかが~from.ミチカ
私は一度深呼吸すると、思い切って物体をつかんだ。そして中から引っ張り出した。
 予想通りの物が出てきた。私の、携帯電話だ。
(ウソ…何で?鞄の中に置いてきたのにっ!)
信じられなかった。まるで魔法にでもかかったような気がした。それとも、私の頭がボケたかと思った。
 本体下部にあるサブディスプレイを見れば、追い打ちをかけるような名前が表示されていた。
(香?何かあった?)
オロオロして携帯電話を開くと、通話ボタンを押し受話口を耳に当てた。荒い呼吸音が聞こえた。
「もしもし?」
『おはよう…ハルちゃん。元気?』
香の声は涙声で、おまけに震えていた。あきらかに様子がおかしかった。
「うん、元気だよ」
『あの…』
「香、もしかして…泣いている?」
『う、ううん!泣いて、いないっ!』
しかし、受話口から鼻をすする『グスッ』と言う音が聞こえた。
『あのね、ハルちゃん』
「なに?」
『昨日の夜は、ゴメンね。本当に、ゴメンね』
「大丈夫、昨日の夜すぐにあやまってくれたから、もう気にしていないよ」
『本当にそう思っている?私と二度と会いたくない、口も聞きたくないとか思っていない?』
「思っていないよ。私、これでも心が広いんだよ。たしかに携帯電話をかってにイジられてビックリしたけど、二度と会いたくない、口も聞きたくないなんて考えていないよ」
『じゃあ、これからもずっと友達でいてくれる?何があっても、友達でいてくれる?』
香の話し声から必死さが伝わってきた。同時に、違和感を感じた。
「…ねえ、何かあった?」
『えっ?な、何もないよ』
「怒らないから、正直に言って。隠していることがあるでしょ?」
『ない。ないよ本当に』
「私はもう四年以上も友達をやっているんだから、心配をかけたっていいんだよ。甘えてもいいんだよ」
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