ここで歌うは君がため〜交わされた約束〜

「私はどちらも正室には迎えない」


黙って事の成り行きを見ていたオズヴェルドが口を開いた。


「どちらも私に合うと感じないからだ」

「そんなっ」

「オズっ」


カルディアもカナリアも、酷く落ち込んでいる。


「確かに私はもうそろそろ正室を迎えた方がいいかもしれません。しかし・・・今はユノだけでいいです」

「オズ・・・」


ぎゅっと強く抱きしめられて、さっきまでの不安が消えていくのをゆのは感じた。


「国王様にお会いする前ですが、失礼させていただきます」

「いくら王子とはいえ、それは無礼ぞ」

「無礼は承知しております。国王様には後日、ご挨拶に伺わせていただきますので」


それでは、と告げるとゆのを抱えて歩き出した。








人々の好奇の視線を浴びながら、お姫様抱っこで連れていかれる。

恥ずかしいけれど、そんなことよりーーー


「・・・オズ・・・」

「不安にさせてすまない。クレア王妃は、いつもあんな感じなんだ」

「ううん、そうじゃなくて・・・。オズは、私が足枷になってない? 私、オズの邪魔になるのは嫌だよっ」

「足枷? なんだ、そんなことを心配していたのか」

「そんなことって! 大事なことだよっ」


オズヴェルドはチョコレート色の瞳に優しさを宿した。


「ユノのことを足枷だなんて思ったことはないよ」

「でも、私のせいで、オズの正室が決まらなかったら・・・」


< 100 / 208 >

この作品をシェア

pagetop