ここで歌うは君がため〜交わされた約束〜
「私はどちらも正室には迎えない」
黙って事の成り行きを見ていたオズヴェルドが口を開いた。
「どちらも私に合うと感じないからだ」
「そんなっ」
「オズっ」
カルディアもカナリアも、酷く落ち込んでいる。
「確かに私はもうそろそろ正室を迎えた方がいいかもしれません。しかし・・・今はユノだけでいいです」
「オズ・・・」
ぎゅっと強く抱きしめられて、さっきまでの不安が消えていくのをゆのは感じた。
「国王様にお会いする前ですが、失礼させていただきます」
「いくら王子とはいえ、それは無礼ぞ」
「無礼は承知しております。国王様には後日、ご挨拶に伺わせていただきますので」
それでは、と告げるとゆのを抱えて歩き出した。
人々の好奇の視線を浴びながら、お姫様抱っこで連れていかれる。
恥ずかしいけれど、そんなことよりーーー
「・・・オズ・・・」
「不安にさせてすまない。クレア王妃は、いつもあんな感じなんだ」
「ううん、そうじゃなくて・・・。オズは、私が足枷になってない? 私、オズの邪魔になるのは嫌だよっ」
「足枷? なんだ、そんなことを心配していたのか」
「そんなことって! 大事なことだよっ」
オズヴェルドはチョコレート色の瞳に優しさを宿した。
「ユノのことを足枷だなんて思ったことはないよ」
「でも、私のせいで、オズの正室が決まらなかったら・・・」