ここで歌うは君がため〜交わされた約束〜
「俺にはまだ正室は必要ない。だから心配するな。あれは、クレア王妃が俺達を仲違いさせようとしているんだ」
「え?」
「側室と仲違いさせることによって、俺の心を不安定にしたいんだろう・・・」
そっか。クレア王妃は、私がオズの本当の意味での側室じゃないことを知らないから・・・。
ーーーカチャッ
ゆのを抱き抱えたまま、オズヴェルドは、ゆのの部屋に入った。
そのまま歩いて、窓際のベッドにそっとゆのを降ろす。
「・・・本当の側室にすることもできる」
「えっ?」
ベッドに座るゆのに、ゆっくり覆い被ってくる、たくましい身体。
「ちょ、オズっ!?」
優しく押し倒されて、心臓が壊れそうなくらいに動いている。
端正な顔が近付いてきて、至近距離で視線が絡まるーーー
「・・・ユノ・・・」
そんな顔で、そんな声で、私の名を呼ばないで欲しい。
求められてるんじゃないかって、必要とされてるんじゃないかって、勘違いしてしまうーーー
さらに顔が近付いてきて、ゆのは反射的に目を瞑った。
キスされる!
ところがいつまで経っても、柔らかい感触が触れることはなかった。
「・・・オズ?」
そっと目を開けると、苦しそうな顔でゆのを見つめている。
「どうし」
「帰さなくてはな」
「え?」
「・・・レヴァノンが秘密裏に調べていることに、俺は気付いている。ユノを召喚した犯人が捕まれば、帰す方法もきっと分かるだろう」
それは、つまりーーー
「今日は疲れただろう。ゆっくりおやすみ」
私が元の世界に帰る日が、近いかもしれないということ・・・?
背中を向けて出ていくオズを見ながら、ゆのは心の中で問いかけた。