ここで歌うは君がため〜交わされた約束〜
☆鏡を操る者
初めは好奇心だった。
王子である自分の、しかも何よりも大切な鏡の前で倒れていた少女。
暗い部屋の中でも、何故か惹きつけられて、自分で面倒を見た。
久しぶりに会ったとき、彼女の美しさに気付いた。
この国では見ることのできない、漆黒の髪、瞳ーーー
そして、陶器のような色白な肌。
目が離せなくなった。
ハジやテトがユノと関わることがあってからは、常にもやもやしていた。
何故かはわからなかった。
それと同時に、ユノの笑顔を見ると、安心できて嬉しくなって・・・
そしてこの間、泣き叫ぶユノを見て、守りたいと強く思った。
君を独りで泣かせたりしない。
だって、俺は、ユノをーーー
気付いてしまった。
正室はもちろん、本当の側室にすることも許されないのに。
いつかは、元の世界に帰ってしまうのに・・・。
「ユノ・・・」
君は俺のものにはならない。
どんなに求めても、叶うことはない。
それがこんなにも、辛いなんて・・・。
だから、胸のこの痛みが深まる前に。
早く君を帰してあげる。