ここで歌うは君がため〜交わされた約束〜
「初めまして、ユノさん」
部屋の中で、にっこりと微笑んでいる金髪の美しい女性。胸の辺りまである髪は、ゆるく巻かれている。エメラルドグリーンの瞳が印象的だ。
「私は、カナリア・カルファ・ジークフリード。オズの幼なじみなの」
「オズ・・・?」
オズ、とは誰だろうか?
その疑問が顔に出ていたようで、カナリアは不審に思ったようだ。
「ユノさんは、オズヴェルドのことをなんて呼んでいらっしゃるの?」
困った質問だ。まず呼んだことがない。あれっきり会ってもいないし、それを不審がられても困る。
「えっと・・・」
「カナリア様。時間通りに進めるように、とオズヴェルド様から言われております」
オルフェのおかげでこのことを追及されることはなかった。
オルフェ、ナイス!
カナリアさんのダンスは分かりやすくて、元々運動が好きなゆのはすぐに覚えた。
「ユノさん、ダンスがお上手なのね。詳しく聞いてはいけないと言われているけど、貴女のこととても気になるわ」
カナリアは声を潜めてゆのに言った。
「側室を取らないと決めていたオズが急に側室を取って、しかもそれが異世界の人間だなんて・・・」
エメラルドグリーンの瞳の色が濃くなる。
「あのっ」
声を出したゆのに対して、笑顔を向けた。
「ダンスの基礎はもう大丈夫です。初めてなのに、この短時間で覚えてしまうのはすごいですわ! あとはダンス経験を積むだけです。今度はパーティーでお会い出来るのを楽しみにしてるわ」
オルフェにも聞こえる大きさの声でそう言うと、カナリアは優雅に立ち去った。