ここで歌うは君がため〜交わされた約束〜
唇を噛み締めて俺を睨んでくるカルディアには、いつもの美しさがなかった。
「そもそもお前は、俺じゃなくてもいい。誰でもいいから王子妃になりたかっただけだろ?」
「違っ」
「違わないね。そんなに王子妃になりたいなら、正室も側室もいないテトを狙えばいい」
カルディアの心は複雑だった。
確かに、正室も側室もいないテトは、カルディアにとってお得物件。
しかしテトは第5王子のため、王位継承権がまわってこないかもしれない。
オズヴェルドならば第2王子であり、側室は身分もない異世界の娘だったので、狙えると思ったのだ。
それに加えて、自分の色仕掛けにも屈しないオズヴェルドに対して、だんだん悔しくなってきていた。
ここで諦めたら、私はあの娘に負けたことになるーーー
「私は貴方がいいの!」
胸の膨らみを押し付けながら抱き着く。
今は二人しかいない。
既成事実を作るなら、今。
「離れろ。俺にはユノがいる」
カルディアの決意をオズヴェルドがすぐに壊してしまう。
「出ていってくれ」
そう言うと、オズヴェルドはこちらを見もしなくなった。
カルディアは次の作戦のために、部屋から出て行った。
「はぁ。ユノに会いたい・・・」
オズヴェルドの呟きは、部屋の中で寂しく響いた。