ここで歌うは君がため〜交わされた約束〜
カルディアは、自分のどこがゆのに劣っているのかわからなかった。
確かに漆黒の髪と瞳は珍しい。それでも自分の方が容姿は美しいとカルディアは思っていた。
何か使えるものはないかと城をすぐに出ずに歩くことにした。
カルディアは、キッシュ家の令嬢として何度も城に上がったことがあるが、まだまだ知らない部分が多く、歩いているだけで楽しいのだ。
ーーーあれ?
カルディアの黄色の瞳が、人影を捉えた。
あれは・・・あの異世界の娘とテト様の従者!
ゆのはツバルと話しているところを、カルディアに見られてしまっていたのである。
何やら言葉を交わしているようだが、カルディアには聞こえなかった。
ちょうどツバルが歩く方向にカルディアはいて、これはチャンスだと思った。
「ちょっと!」
大きな柱の影から声を潜めて呼びかける。
しかしツバルはスタスタ歩いて行ってしまう。
「ねぇ!」
だんだんイライラしてきたカルディアは、ツバルを追い越して前に立ち塞がった。
「無視するんじゃないわよ! あんたに用事があるの」