ここで歌うは君がため〜交わされた約束〜
ダンスは忘れない程度に練習をして。一番大変なのは、勉学だった。
ここは異世界なのに何故か言葉が通じたが、書き言葉は全く違ったからだ。
「えーっと、なんだっけ?」
「ここが違います」
レヴァノンは親身に教えてくれる。
勉強は得意とは言えないが嫌いではないゆのは、いつも一生懸命だった。
それに加え、カナリアのダンスを短時間でマスターしたとオルフェから聞いていたレヴァノンは、ゆのに一目置くようになっていた。
カナリア様はきっと厳しくしたのだろうが、この方は全く気付いていらっしゃらない。
異世界から来て不安なはずなのに、驚くぐらい順応している。
寂しくはないのだろうか?
辛くはないのだろうか?
帰りたくはないのだろうか?
ゆのの帰る方法は、オズヴェルドが模索中だ。
しかし・・・あの方は忙しい身で、あまり変に詮索すると怪しまれてしまう・・・
などど考えていたら、扉の外が騒がしくなった。
「困ります! こちらの部屋には、いかなる理由があろうとも、誰も立ち入れてはならないと」
「はいはい」
警備兵の声をあっさりと遮る声。
「オルフェ」
「はい、レヴァノン殿」
バンッーーー
扉が勢い良く開かれる。
「君がオズの側室?」
侵入してきた男は、水色の瞳を輝かせて聞いてきた。