ここで歌うは君がため〜交わされた約束〜

そして、この絵は。


「『交わされた約束』の絵だ・・・」


悲しみにくれたアリアが、心の想いを込めて夜空の下で歌を歌い、部屋のテラスに出ていたオーマンの耳にも届くシーンの絵。


あまりにも儚くて綺麗で、しばらくそこから動けなくなった。


「こんなに素直な気持ちで歌えたら・・・」


アリアは悲しみを歌っているけれど、それは自分の中から溢れてくる言葉なのだ。


「あれ・・・?」


絵は額縁に入っているのだが、よく見ると満月の部分だけガラスがない。

そっと手を伸ばして月に触れると、

カチャンッーーー

ちょうど押しボタン式のスイッチを押したときのような音がした。


いきなり絵ごと壁が凹んで、指に力を入れていたせいか、バランスが崩れる。

そのまま壁は横にスライドし、人が一人通れるぐらいの穴が現れた。


「これは・・・」


明らかな秘密通路。

入ろうか迷う。

迷っているうちに、扉が閉まり始めた。

もうここに来れるかどうかわからない。

そう思ったゆのは、残された隙間から身をねじこませた。

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