ここで歌うは君がため〜交わされた約束〜

部屋に運んでも、ゆのは目を覚まさなかった。手刀の効果もあるが、ゆの自身が目を覚ましたいと思っていないことが大きいかもしれない。


「どうやら俺は鏡のヒビのせいか調子が悪いらしい。もしクレア王妃から何かあったら頼むぞ、ハジ」

「ああ。オズ、ユノが目覚めたら・・・」

「時計を返さなくてはな」

「・・・・・・」


問題はそれだけじゃないはずだ。クレア王妃がユノを召喚した理由は、きっと歌の力があるから。この歌の力が、王位継承権にどう関わってくるのか・・・。


「とりあえず今はユノ様の身の安全を保証することと、お目覚めになったら歌の力のことを聞きませんと」


レヴァノンの言うことは理解できるが、それはゆのの傷を抉ることになる。ハジは乗り気になれなかった。オズヴェルドもまた、以前ゆのが倒れたことを思い出していたため賛同しなかった。


「お二人が聞きたくないとおっしゃるのなら私が聞きます」

「そうじゃない。それを聞くことは、ユノの心に負担がかかるんじゃないかと懸念してるんだ」

「しかしオズヴェルド様。これは王位継承権にも関わる重大な問題です」

「俺は王位継承権など欲していない」

「テト様が王位継承権を得てしまわれれば、クレア王妃様の思惑どおりになってしまいます」

「・・・テトは、悪い奴じゃない」

「存じております。しかし、テト様が王位継承権を得てしまわれれば、ユノ様を奪われるかもしれませんよ?」

「ユノを・・・?」

「レヴァノン、オズに余計なことを言うな」

「ハジ殿。オズヴェルド様のことを思って申し上げているのです」

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