ここで歌うは君がため〜交わされた約束〜
オズヴェルドは首元をゆるめて、シャラッと音をたてながらある物を取り出した。
「・・・ユノの時計、ですか・・・?」
「そうだ」
いくら探しても見つかるわけがない。オズヴェルドはゆのの時計をずっと首に提げていたのだ。
手を伸ばす弟の手に時計を委ねる。
テトは受け取った時計を自らの首にかけた。
「オズ兄様の分も大切にしますから」
そう言って、テトは横たわるゆのを抱き抱えた。
本当は触れるなと言いたい。漆黒の髪も瞳も柔らかな肌も、触れていいのは自分だけだと主張したい。
テトはゆっくりと背を向けて歩いていく。
扉を開けた先にいるオルフェが、驚愕の顔でテトとユノを見ているのが見えた。
ーーーガチャン
ドアは無常にも音を立てて二人を隔てた。
ユノはテトに懐いていたと聞く。
これでよかったんだと言い聞かせて、オズヴェルドは仕事に戻ることにした。