ここで歌うは君がため〜交わされた約束〜
「ユノはまだ目覚めないのか?」
仕事部屋に戻ると、ハジが待っていた。
「・・・ああ」
オズヴェルドの暗い顔が気になったのだろうか。ハジは怪訝な顔をする。
「どうした? なにかあったのか?」
「・・・・・・・・・した」
「え?」
あまりにも小さな声で聞き取ることができない。
「もう1回言ってくれ」
「・・・ユノを・・・」
「・・・?」
「手放した・・・」
「は?」
意味がわからないという顔を隠そうもせずに、ハジはオズヴェルドに詰め寄った。
「・・・どういうこと?」
「・・・テトにユノを託した・・・」
「っ! どうして!?」
確かに仲はいい。しかしオズヴェルドは王族だ。くだけた口調で話していても、一線は置いていたのに。
今、ハジはオズヴェルドの胸ぐらを掴んでいる。
「・・・俺と一緒にいても、ユノは幸せにはならない。だったらテトに」
「ふざけるな!」
怒りを全面に出して、ハジはオズヴェルドの頬を殴った。
バシッーーー
「ってぇ・・・」
オズヴェルドの口の端からは血が流れていた。