ここで歌うは君がため〜交わされた約束〜
「オズ、でいい」
綺麗な顔にシワを寄せながらオズヴェルドはそう言った。
「えっ?」
「親しいものはみな俺をそう呼ぶ。側室のお前がオズヴェルド様なんて呼んだら、親しくないと言っているようなもんだ」
確かに。
「じゃあ、オズと呼びますね」
そう言ってゆのが微笑むと、オズヴェルドは一瞬動きを止めた。
「お前・・・」
「オズヴェルド様ー!」
オズヴェルドの言葉を遮るレヴァノンの声。
普段じゃ考えられないような大声を出して、こちらに向かって走ってくる。
「どうした、レヴァノン。らしくないぞ」
はぁっ、はぁっ、ーーー
乱れた息の中、レヴァノンが告げた。
「ご報告致します。クレア王妃がユノ様との面会を希望されております」
「なに!? クレア王妃が!?」
オズヴェルドだけでなく、護衛のオルフェも焦りを顔に浮かべている。
「面会希望理由は?」
「オズヴェルド様の初めての側室なのでお会いして話したい、とのことです」
「断る」
取り乱した割には、あっさりと決断するオズヴェルド。
何故断るのかゆのには理解できない。
どうせ自分が異世界から来た人間だといずれはバレてしまう。
きっと王妃様というのだから、この国でとても偉い人のはず。
ならば最初から正体を明かして、犯人を捕まえる協力をしてもらえばいいのにーーー