ここで歌うは君がため〜交わされた約束〜

漆黒の瞳がオズのチョコレート色の瞳を捉えた。

不安、戸惑い、悲しみ・・・
それと同時に聞いてほしいという気持ちが伝わる眼差しだった。


「どうした? 俺でよければなんでも聞く」

「オズじゃなきゃだめなの・・・。オズに聞いてほしいの・・・」


ソファーにゆのを誘導したオズヴェルドは、横に座ってゆのの手を握った。

緊張しているのか、少し手が震えていたからだ。


「あのね・・・聞いてほしいのは、元の世界の話なの・・・」

「元の世界の話?」

「うん・・・。私がクロヴァローゼ国に来る前、どんな生活をしていたか・・・」


ゆのの様子からよくない話だということは予想できる。それで今オズヴェルドにできることは、ゆのの話を聞いてやり受け入れること。


「わかった。ユノの気持ちが整ったら話してくれ」


深呼吸をして、瞼を閉じた。


「私の家は3人家族だったの・・・」







柊家は3人家族だった。父、母、ゆのの3人。

父はエリートコースを歩む会社員で母はピアニスト。母によって才能を見い出されたゆのは、幼い頃からよく歌っていた。


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