ここで歌うは君がため〜交わされた約束〜

「ユノ。いつかは俺の側室が異世界の人間だとバレるだろう。しかし、今じゃない。それに・・・」

「それに?」

「俺はお前をクレア王妃に会わせたくない」


チョコレートのような瞳が、強い意志を滲ませた。


「恐れながらオズヴェルド様。クレア王妃様の誘いを断るのは些か難しいかと」


頭を深々と下げるレヴァノン。頭脳明晰でオズヴェルドのブレーンとも呼ばれる彼が難色を示している。


「クレア王妃は日付をいつと指定してきた?」

「こちらの都合のいい日に合わせると」

「なるほどな。悪いがユノ、しばらく部屋から出ないでくれ。ユノは体調不良で面会が難しいということにする。また、俺が側室を溺愛するゆえに、無理はさせたくないと思っていること。それに、クレア王妃には俺が紹介したいが都合が合わないと伝えてくれ」

「・・・御意」


レヴァノンは右手を左胸に当てて頭を下げた。


「ったく、ハジがユノに会ったって聞いたから来たのに。ほんとにロクなことがないな」


オズヴェルドの呟きを拾ったゆのは驚いた。

会いに来てくれなかったことに対して少しの寂しさは感じていたが、それは自分の帰る方法を探していたためだとゆのは知っている。
それゆえに、


「そんなことで会いに来たのですか?」


と思わず聞いてしまった。


「いや、ハジが・・・お前を気に入っている様子だと聞いた」

「えっ・・・?」

「ユノは、もっと自分に気をつけるべきだな」



オズヴェルドもゆのと同じく、明るい場所で見たことで、ゆのがますます魅力的で美少女であると感じていた。

ゆのの漆黒の髪が風になびき、同じ色の瞳が太陽の光に煌めく。色白の肌がますます透き通って見える。


〝あのときの部屋は暗かった〟


それだけでこんなにも印象が変わる。

< 17 / 208 >

この作品をシェア

pagetop