ここで歌うは君がため〜交わされた約束〜

「ユノ様は髪も瞳も漆黒ですから、夜の送りの儀式では本当に真っ黒になってしまいますね!」


暗い顔をしたゆのを励まそうとしたのか、ミーシャは笑ってそう言った。


「送りの儀式はどんなことをするの?」

「死者を弔う言葉を述べて、鏡と時計を死者に向けます」

「鏡と時計・・・」


ここでもまた鏡と時計だ。クロヴァローゼ国では、切っても切り離せないもののようだ。


「ですから、ユノ様も時計を忘れないようにしてくださいね」

「わかった」


実はいつも首からかけているので、ミーシャの心配は必要なかった。


「送りの儀式では、できるだけオズヴェルド様とご一緒に行動なさってください」

「うん」

「王位継承権第一位のアレン様が亡くなられた今、クレア王妃様がどんな行動をなさるのか心配なのです・・・」


ミーシャのアメジストのような瞳には、涙が浮かんでいた。


「ミーシャ、泣かないで」

「私っ、ユノ様のこと、本当なお慕いしております! だから、心配なんですっ」


ミーシャを見ればわかった。心の底から心配してくれている。


「わかった、気をつける! だからもう泣かないで?」

「すみません・・・」


それからゆのは、ミーシャをなだめながら夜まで過ごした。

< 177 / 208 >

この作品をシェア

pagetop