ここで歌うは君がため〜交わされた約束〜
「起きてください」
「んっ・・・?」
誰かの声がする。
床の上で倒れていたせいか、身体が痛かった。
「食事の時間です」
目を凝らすと、カーテンから太陽の光が透けて見えた。
「朝・・・?」
「そうです。食事はここに置いておきます。では」
朝が弱いゆのは、それが誰なのか分からないまま食事にありつくことになった。
囚われの身、しかし後宮の食事とは・・・?
恐る恐る見ると、城で食べるものよりかは質素だったが、十分に美味しそうな食事だった。
パン、スープ、サラダ、卵料理・・・
「美味しい・・・」
もぐもぐと食べていたが、ゆのは重要なことを思い出した。
この部屋は、窓には鉄格子、部屋のドアも開かない・・・
自由がないのは元の世界での暮らしを連想させた。
「他にも、この部屋には何かあるかもしれない・・・」
ゆのは朝食を食べる手を止めて、部屋を物色し始めた。