ここで歌うは君がため〜交わされた約束〜
「しかし・・・」
珍しくレヴァノンが言い淀んだ。
「なんだ?」
「・・・ユノ様の歌の力について、ユノ様がどのように証言するのかが分かりませんと、対策しかねます・・・」
〝 先程の歌でカルディア・キッシュが苦しんでおる。そのような変な力を持った異世界の人間を野放しにはできまい 〟
クレア王妃の言葉が頭によみがえる。
「クレア王妃はユノが歌の力を持っていると知っていたのか・・・?」
そうでなければ、歌が原因で人が苦しむという発想にはならないだろう。
〝 ユノ様には、他の人にはない特別な何かがあって、それが王位継承権に関わるのではないでしょうか?〟
〝 『交わされる約束』に出てくるアリアと同じように、ユノには歌の力がある〟
「クレア王妃は、ユノの歌の力を使って王位継承権を得ようとしている。だから歌の力があるともうバレているわけか」
「そのとおりでございます。あくまでもそうではないか、という仮定ですが」
仮定の話とは言っても、レヴァノンもオズヴェルドもユノの歌の力を目にしてそれ以外の理由が思い付かなかった。
「しかし、周知の事実ではない・・・。ユノがシラを切ることを祈るしかないな」
「実際それ以外の方法はありませんし、ユノ様も素直に自分の歌の力のことを明かしたりしないでしょう」
「それならば。俺たちができることは決まったも同然だ。あくまでもカルディアが倒れたのは偶然でユノは関係ないというスタンスを貫かねばな」
「はい」
それから数分後、オルフェを通して使いの者が来て、明日カルディアの裁判が行われることを知らせに来た。