ここで歌うは君がため〜交わされた約束〜
今日はどんな夢だろうーーー?
暗闇に包まれた夢の中で、ゆのは漆黒の瞳をゆっくり開いた。
ここは、どこーーー?
2週間ほど前から、同じ夢を見続けている。
正確に言えば、夢の続きを見続けているのだ。
ずっとただひたすらに暗闇の中を歩く夢。
夢の中のはずなのに、暑さや寒さを感じることがある。
前は見えないはずなのに、なにかにぶつかったりしないし、引き寄せられる様にただただ歩く、不思議な夢。
夢から覚める瞬間はいつも突然で、夢を見るのはその目覚めた場所からなのだ。
なにか法則性があるのでは、と夢の中で考えていると、身に覚えのない懐中時計のようなものが首に提がっていることに気付いた。
文字盤は日本語でも英語でもなくて、見たこともない文字。
その上を走る針が一周したら夢から目覚めるのだ。
どうせ今日もあてもなく彷徨うだけだと思っていたのだが、どうやら様子が違う。
遠くの方で、なにかがキラキラと光を放っている。
とても綺麗で、眩しい光。
こんなことは初めてだった。
暗闇の中で、光に吸い寄せられるように私の足は動き出した。
「え、鏡?」
暗闇の中で光を放つそれは、鏡だった。
私の身体を全部映す、等身大の鏡ーーー
この暗闇で、どうして鏡が光るの?
そっと右手を伸ばして触れてみる。
鏡の中の私が、左手を伸ばす。
触れ合った、次の瞬間。
「えっ!?」
鏡の中から手が出てきて、私の手をがっしりと掴んだ。
そのまま強い力で引っ張られる。
「きゃあああああああ!」
私はそのまま鏡の中へ吸い込まれたーーー