ここで歌うは君がため〜交わされた約束〜

「ユノ・・・、ユノ・・・」


軽く身体を揺さぶりながら名前を呼ぶ。


「んー・・・?」


ゆのの意識はまだ夢の中だ。


「ユノ、起きろよ」

「ミー・・・シャ・・・? まだっ、眠・・・い・・・」


ぽやぽやしているゆのが、可愛らしく感じられた。

だが、この俺をミーシャと間違えるなんて!

どう考えても声質からして違うのに。

少し悪戯心が湧いてきたオズヴェルドは、ゆのの耳元で囁いた。



「ユノ・・・起きろよ・・・。今すぐ起きないと、キスするぞ」

「ん・・・? え、きす・・・? キス!?」


勢い良く瞼が開いた。
漆黒の瞳が、俺を映している。


「もうっ、オズ! 起こすなら普通に起こしてくださいよっ」


頬を染めながら怒る姿は全くもって怖くない。


「俺は普通に起こしたぞ? でもお前が起きなかったからな」

「っ、だからって!」


オズヴェルドは冗談めいた色合いを見せていた瞳を真摯に変えて、ゆのをじっと見つめた。


「俺はこれからしばらく、クレア王妃の目を欺くためにお前と行動する機会を作る。手始めに今からここで朝食を取るぞ」

「えっ!」


ゆのは驚いた。今までずっと会いに来てくれなかったオズヴェルドが、一緒にいてくれる時間を増やしてくれるなんて。


「不満か?」

「ううん。嬉しいです!」


無邪気に笑うゆのの笑顔を見たオズヴェルドは、身体を反転させた。そして口元を押さえている。僅かに見える横顔は、なんだか赤い気がする。


「オズ、どうしたの?」


お前のせいだ、とは言えないからつらいものである。



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