ここで歌うは君がため〜交わされた約束〜

「いや、なんでもない」


すぐに表情を戻してゆのに向き直る。


ーーーコンコンッ


「朝食をお持ち致しました」

「入れ」

「失礼致します」


湯気を立てるスープや、香ばしいパンの香りに食欲が引き立てられる。


「今日は給仕はいらない」

「わかりました」


いつもは順序よく出されてくる料理が全て机に並べられた。


どうしてーーー?

ゆのは疑問に思う。


「ユノと二人で話がしたい」

「えっ!」


ゆのの顔がほのかに赤くなった。

食事を持ってきたシェフも、思わず皿を並べる手を止めてオズヴェルドを凝視している。


「ん・・・?」


ゆのとシェフの様子に自分の発言を振り返ったオズヴェルドは慌てて言った。


「べ、別に変な意味じゃないぞ?」


変な意味って、なんだ?
自分でもよくわからないオズヴェルドだった。


シェフからしてみれば、女性に対してそんなことを言うオズヴェルドを初めて見たものだから、驚きが絶えない。


「失礼致します」


そう言って部屋を出る顔は、少しニヤけていた。


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