ここで歌うは君がため〜交わされた約束〜
「・・・いっ、おいっ・・・」
んーーー?
誰かの、声がする。
「おいっ、大丈夫か?」
低い心地よい声とともに、ぺちぺちと音をたてる頬。
「んっ・・・痛い・・・」
誰ーーー?
「お前は誰だ? 何故ここにいる?」
ぼやける視界の中で、燃えるような赤い色を捉えた。
「んっ・・・?」
真っ赤に熟れた、リンゴみたいーーー
「・・・リンゴは、好き・・・」
僅かに開いたと思われた瞼が、また漆黒の瞳を隠していく。
「おいっ、質問に答えろ。寝るんじゃない」
ぺちぺちと頬を叩かれているけれど、もう目を開けれそうにない。
異様なけだるさに戸惑いながら、ゆのは意識を手放したーーー