ここで歌うは君がため〜交わされた約束〜
「どんなファンタジー?」
「あのね・・・」
お互いのお気に入りのファンタジーの話をする。
好きなものの話はとても楽しくて、時間が過ぎるのが早く感じた。
「ユノが喜んでくれてよかった。もう私は行かなくちゃいけないんだ・・・」
今まで楽しい時間を過ごした分、寂しく感じる。
「もしユノさえよければ、ちゃんと治ったとき城の図書室に行かないか?」
「え! このお城図書室があるの?」
部屋と食堂と庭とダンスレッスン室しか行ったことのないゆのは、城のことに疎かった。
「まだ行ったことなかったのかな? 私が案内するよ」
「嬉しい!今日テトが話してくれたファンタジーも教えてくれる?」
「もちろん!今度は手紙で日時を知らせるね」
「うん!楽しみにしてるね!」
次の約束があれば、もう寂しくない。あと1週間ほど我慢すれば、テトと図書室に行けるのだから。
「今日はありがとう、テト」
「私もユノと話せてよかったよ。ついつい長居をしてしまった。でも・・・思ったより元気そうでよかった」
長い右手を伸ばし、するりとゆのの頬を撫でる大きな手。
ブルーの瞳がオズヴェルドのことを話していたときみたいに、優しさを宿している。
テトってほんとにいい人。
「名残惜しいけど、またね」
そう言って頬から手を離し、扉を開けて出て行った。