ここで歌うは君がため〜交わされた約束〜
ゆのはなにがなんだかわからない。
「えっと・・・テト? どうして鏡に話しかけたの?」
おずおずといった感じてゆのが聞いてくる。
「『交わされた約束』、それを読めばわかるよ」
「え・・・?」
それはさっきテトに教えてもらった本のタイトル。
「それを読み終わって聞きたいことがあったら僕のところにおいで」
「・・・うん」
気になる。とても気になる。鏡に話しかけたところで、何かが起こるわけでもないし・・・。
考えているゆのを見つめるブルーの瞳は優しい。
やはり、オズ兄様は話していらっしゃらないんだな。しかしユノが異世界の人間ならば、時計を持っているはずだが・・・。
「ユノ、時計を持っているかい?」
「ううん、持ってないわ。時間が知りたいの?」
「いや、持ってないならいいんだ」
ならば、落としたのだろうか?
それとも、オズ兄様が持っているのか・・・?
疑問が次から次へと沸いてくる。
「失礼いたします」
そんなとき響いた声。
「ミーシャ!」
紅茶とクッキーを乗せたワゴンを押しているのはミーシャだった。